Act.11 エピローグ 朝食はカフェオレと早朝アニメから。 「内山さぁん!早くしてくださいよ!ぶどうパンマンが始まるでしょ」 「いいやん、もうちょい寝かしとってよぉ」 騒がしいラコンド。それを眺めるお客様。 「あれ?そういえばマスター、ご意見箱はどうしたんだい?」 「え、あぁあれですか?あれはなくしました」 「おや、どうしてだい?」 「あのね、お客様。月夜の怪盗はもういなくても大丈夫だと思ったの」 怪盗が居なくても、この町はちゃんとやっていける。警察だって、今まで以上によく働いてくれるようになると思うの。それに、もっと自分の力で何かをやってのけようって思う心が育てられる気がするんだ。 みんな一人一人が人生を全うして、頑張っていける世の中がこれから作られていくの。だから、怪盗さんのお仕事はもう終わり。 「ね、そう思わない?お客様っ」 ××× 裏地の伝説。 秋地町にある小さな地区、裏地。そこにある喫茶店ラコンドには、奪われた品々を取り返してくれる素敵な人物と繋がる事ができるご意見箱が設置されていた。まぁもちろん、誰の願いも聞き入れてくれる訳ではなく、特に奪われたものを取り返したいという願いが詰まっている依頼でしか動かない怪盗ではあったが。 彼女は何でもできた。盗むのはもちろん、ワイヤーを使ってあちこちにぶら下がってみたり、屋根の上を地上のように歩き回ったり、銃の腕前だって並の腕なんかじゃなかった。 でもそんな彼女も一人の男に恋に落ちたという。相手は警官だったらしい。立場上、つきあう訳には行かず時折秘密裏に会っては話をしていたと噂で聞く。 今、彼女はどうしているのだろうか。彼女の正体は誰も知らず、密かに伝説は一人歩きをしはじめる。そんな日の終わり、ひっそりと彼女は自分の庭である裏地で暮らし続けていた。 「板山さん。あの日のこと覚えてる?」 ドジな私が貴方とぶつかった日の事を。 → |
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