『トイレ』

 ぞろぞろぞろぞろ……。授業と授業の合間の十分休み。女子はおしゃべりをしながら集団でトイレへ行く。
 用を足すだけのトイレに何故そんなにたくさんで行く必要があるんだ。と、愛読書を片手に、廊下に出て行く女子を眺めながら杉山は思っていた。

「あれ?杉山、トイレ?」
「あぁ」

 トイレは一人で行くものだ。速やかに用を足し、次の人に渡す。そう、これこそトイレのあり方というもの(そんな事、誰も言わない)
 トイレにやってきた杉山は、ファスナーを下げて用を足す。次ぎの人が気持ちよくできるように汚すまいと気を遣いながら。と、杉山が気持ちよく用を足していると、彼の耳にチャイムの音が響いた。教室をぎりぎりに出たものだから、時間が足りなかったのだ。
 チャイムの音に慌てた杉山は、早急に戻ろうと出していたものを仕舞い、チャックを閉めようとしていた。その時だった。
 かなりの慌て過ぎで、きちんとしまいきれてなかったらしく、チャックにそれを挟んでしまったのだ。
 強烈な痛さに見舞われた杉山は、患部の傍をおさえながら悶絶する。意識の端でチャイムの音が消えていくのが分かったが、それどころではなかった。
 一人トイレで痛みを堪えていると、授業中であるにも関わらず、忍が入って来た。忍は入るなり、杉山に「何やってんの?」と問うたが、杉山は首を横に振るだけで精一杯だった。
 その様子を見ていた忍は、杉山を変だなぁと思いつつも今の時間が自習になった事を伝え、自分も用を足していた。


 杉山は思った。
 女子が集団で行くのは、こういう一大事にたすけられるようになんだ。と。
 まったく、どいつもこいつもアホばっかりだ。

09.03.01 UP

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