『情けない俺だけど』

 ぐうたらな年越し。
 母さんの方の実家で紅白見て年越しそば食って、あけおメール。そんな一年の終わりと始まりを迎えるはずだった31日の今日、隣には両手でカップを持ちココアをフーフーしている都ちゃんがいた。

「本宮君、ごめんね。私がわがまま言っちゃったばっかりに、帰省できなくて」
「そんな、謝ることないよ。俺、嬉しいんだから」

 毎年、暮れになると母方の実家に帰る俺たち本宮家は、例に漏れず今年も帰るはずだった。
 けれど、冬休みに入る直前、都ちゃんのテリトリーの図書室に呼ばれた俺は、初めてかもしれない彼女のお願いを聞いた。

「あ、あのっ……。もしよかったら、あ……無理だったらいいんだけど、えっと……大晦日の夜から元旦まで、本宮君と一緒に居たいんだけど……だめかなぁ?」

 彼女らしい、たどたどしいお願い。きっと、その柔らかい胸の下に隠れるか弱い心臓は、今にも破裂しそうなくらいだろう。そんな彼女の必死のお願いを断るわけがなく、半ばにやついたまま了解したのだが……。

『やばい、俺下半身保たないかも』

 好きな子と二人っきり、しかも年越しに。なんて状況で俺が大人しくできるわけがなく、純粋な彼女を前にして、人知れず悶えていた。

『ちょっと、触ってもいいかなぁ。いや、だめだめ。彼女のことを考えると……。しかし、姫始めは経験したい……』
「じゃ、なくて!」
「えっ?」

 不意に出してしまった大声に、びくりと反応する都ちゃん。思わず思っていることを口にしていた俺は、内心バクバクしながら言葉を足す。

「あ、いや……えっと」

 いつもなら、ペラペラと話せるのに、この状況のせいなのか。全くと言っていいほど、フォローの言葉が出ない。困惑する俺に、都ちゃんはカップを置いて立ち上がると、今にも泣きそうな顔をした。

「ごめんなさい。やっぱり、迷惑だった……よね?」

 違う、違うんだよ。泣きそうになりながら帰る準備をする都ちゃんの後ろで、わたわたする俺。もう、男としてこんな恥ずかしいことはないけれど、全くフォローが出来ず、都ちゃんの帰り支度も終わってしまう。

「じゃあ……、私帰るから」

 そう言ってドアに手をかける都ちゃんに、もう何をしてでも止めなきゃと走る俺。そして、背後で除夜の鐘が鳴る中、俺は振り返らせた都ちゃんとキスをした。

「えっ、えと……本宮く、ん?」
「都ちゃんと、こういう事したかったんだよ。でも、やっぱりじっくりいきたいなってのもあって……えっと、とりあえず、あけましておめでとう」

 何言ってるか分かんなくて、柄になく顔熱くさせながら俺がそう言うと、都ちゃんはクスリと笑ってこっちを見た。

「本宮君」
「あ、……えっと、なに?」
「あけましておめでとう。今年もよろしくね」
「!」

 言葉終わりに返ってきたキス。マジでうれしくて、抱きしめて都ちゃんを全身で感じ取る。

「うわぁ、俺幸せだ。今年一年、都ちゃんがいれば怖いもんなしだよ!」

 とはいえ、きっと色々バカやって怒られると思うけど、見捨てないでそばで笑ってて下さい。
 大好きな都ちゃん。
 今年もよろしく、お願いします。




10.01.01 UP

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送