『連想してみよう』

 連想してみよう。
 忍が変態ではなく、紳士的な男だったとしたら。
 時に階段から落ちそうになったあなたを救い、抱き留めたとしたら。

「大丈夫? 怪我はなかったかい?」
「え、あ……ありがとうございますっ!」

 ドキドキしすぎて、めまいがするだろう。


 連想してみよう。
 杉山が、実は超がつくほどの子供好きで園児と戯れていたとしたら。

「ほぉら、みんなぁ。今からお遊戯会の練習ですよぉ」
「はぁい!」

 そして、あなたが園児の母親ならば、

「奥様の所のお子さんは、ほんとに利口でお友達にも優しいんですよ。奥様の教育がよろしいからですね」

 ギャップにやられ、禁断の道へと進むだろう。


 連想してみよう。
 草介が、不良で、一匹狼として徘徊していたら。

「俺様に触んな。俺は……ただの素行の悪い不良だ」
「先輩っ、私……そんなあなたが好きなんです!」

 危険な世界に飛び込みたくなるのかもしれない。


×××


「で、これ何?」

 ピラピラと今まで読んでいた文章が書かれた紙を忍がちらつかせていると、持ち主である杉山が本を置いてそちらを向いた。

「随分前に廊下に落ちていたのを拾っていたが、すっかり忘れていたものだ」
「拾ったって……持ち主に返すとか、しようよ」
「だから、忘れていたと言っただろう? 第一そんな面白いもの返す訳ないだろう」
「確かにっ! 忍っちが紳士的なんて、天変地異が起きてもあり得ないよ!」
「それどういう意味? 草介っ」
「え?そ・の・ま・ん・ま」

 にやにやとしながら言う草介に、バタバタと追いかけ出す忍。風にのってひらりと飛んだ紙を見ながら、家主の杉山は静かに二人を部屋からつまみだした。
 そんな夏休みのことでした。

「あなたは誰がお好み?」




09.12.31 UP

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