『むしムシ無視』

「――というわけで、夏休みだからといって羽目を外しすぎるんじゃないぞ。特に本宮、頼むから下らないことで警察の世話になんかなるなよ」

 そう釘を差された終業式から数日。一番憂鬱になりそうな宿題から片付けようと言うことで、草介の家で勉強会が開かれた。が、そこに待ち受けていたのはセレブの快適な空調ではなく、自然暖房の効いた部屋で男三人がぶりぶり汗を書きながら、腕に張り付くプリントの問題を処理している姿だった。

「あぁぢぃ〜」
「夏だもん。仕方ないよ」
「そういうことじゃなくてねぇ」

 そもそもこうなるのを知ったのは、ほんの数分前のこと。草介の母の一言が灼熱地獄への始まりだった。

「あら、こんな暑い中わざわざ来てくれたのねぇ」
「美しいおば様を見ることができるなら、何度でも行きますよ?」
「まぁ、忍君たら。でも、ごめんなさい。お返しするものがないどころか、二人には謝らなければならないのよ」
「と言うと?」
「うちの空調、ちょっと故障しちゃって、今業者の人に見てもらってるの。それで――」

 全室空調が使えないの。


×××


「だいたい何で言ってくれないんだよ」
「別に空調が壊れてようが勉強はできるから」

 と、黙々と目の前にある課題を済ませていく草介。二人の会話を聞いていた杉山に至っては、かなり先の問題を解いているようで、未解答の枚数より解答済みの方が断然多かった。

「分かったら、早く解いた方が良いと思うよ? 忍っちのことだから、最終日に泣くよ」

 そう言い捨て、草介は自分の課題を進めていく。あまりの態度と暑さに気がおかしくなった忍は、すくりとその場に立ち、着ていたシャツに手を掛けた。

「グッバイマイウォー……ぶふっ!」
「脱いだらそのまま追い出すぞ」

 ズボンに手をかける前に草介の一撃によって防がれたが。
 全く暑い日は、判断が鈍る。




09.12.31 UP

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