『ロリポップ』

 ――疲れた時は甘いもの。
 それはほとんどの人に当てはまり、我らが杉山も例外ではない。
 彼が十分休憩中にチョコを口に含む姿を我々は目撃しているし、皆で集まって勉強している時も、

「一旦休憩するか。ほら、選んで食べろ」

 と、色とりどりの包み紙に入ったチョコレートを出してくる。
 そんな彼が今日に限ってチョコではないものを口に含んでいたのを目撃し、教室は騒然としていた。


 フルーツ、デザート、ドリンク……様々な味と色で楽しめる飴――ロリポップ。昔から多くの世代に愛されており、今じゃどこの店に入っても大体は並んでいる商品。かく言う甘党の草介隊員もたまに食べているものである。
 そう、今まさに杉山はロリポップを口に含み、ちろりと赤く熟れたような舌をちらつかせながら読書に没頭していたのだ。

「望っち、おいしい?」
「あぁ、たまにはありだな。プリン味も」

 薄く開かれた口元からうっすら見える舌。時折、じゅるっと水音がたつことで周囲の女子が黄色い悲鳴をあげる。

「きょ、今日はちょっとうるさいねぇ」
「あぁ」

 時には、そのまま倒れてしまう子もいるというのに、その張本人はさして気にする様子もなく、静かにページをめくる。まったく、君がいるからこんな風に騒がしくなっているのだよ?

「杉山、図書室の方が良くない?」
「図書室は飲食厳禁だ。そんなことも忘れたのか?」
「いや、そういうことではなく……」

 この間にも、我々の周りでは次々に女子の視線が杉山に集まっていく。そしてそんな中、誰しも気になっていたことに、草介隊員がついに質問した。

「ねぇ、望っち。今何読んでるの?」

 草介隊員の問いかけに、すっと渡してくる杉山。我々は渡されるがままに受け取ると、それは最近人気のあるメンズ雑誌で、そこには杉山が今回こんな事件を引き起こした全貌が記されていた。

『必殺! 女子の視線を独り占め。女子は意外と妄想するタイプの子が多くて、ちょっとしたことで、かなり過激な妄想までしちゃうらしい。だから、ロリポップ舐めてるだけでもう大変。君も試してみてね』

 まったく、実践してモノにしてしまうのだから、はた迷惑な話だ。
 実験はほどほどに。


※この雑誌コメントはまったく無意味なことなので、実践しないようにしてください。



09.08.30 UP

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