『のめりこむ』

 敵対する二人が惹かれあって。
 けれどそれは叶わぬ恋であって。
 二人の行く末など、涙と苦しみしか生まないものなのだ。

 狙い合う銃口。
 震える唇で呟いたメロディーは、互いの耳に届いたのだろうか……。

「愛してる」
「ずっと前から」


×××


「未結ちゃあぁんっ!」
「うるさいよ、忍っち」

 夏休み直前、期末テストを控え、いつもの三人プラス加奈子で草介宅に集まり勉強に勤しんでいた夕方のゴールデンタイム。珍しく真面目に勉強していた忍がそわそわしだした。
 最初は放置をしていたメンバーだったのだが、七時を回る十分前。

「未結ちゃんがぁ!」

 と、半ば発作のような感じで立ち上がったので、呆れながら杉山が問いかけると、アニメが見たいとごねたのが、始まり。
 もちろん、勉強のために集まったのであって、大画面でアニメを見る為ではなかったので、家主である草介は拒否したのだが、涙目で迫ってきた忍(の気持ち悪さ)に負け、しぶしぶ休憩と称し、シアタールームでアニメ『紡がれたメロディー』を見るはめになった……。


 で、冒頭に戻る。

「うわぁ〜もぅやばいっ。やばいよ、草介君よ!」
「うん。忍っちがね」

 たかが三十分のアニメだが、内容はなかなかのもので、初めて見た草介達ですら、一言も喋らず見ていたほど。確かに、一話から見ている忍にはクるものがあるだろう。
 でも……。

「俺もぅ、未結ちゃんの銃になりたい。あんな風にちゅってされたい」

 これを変態と言わずしてなんと言えばいい?
 アニメのヒロインである未結にご執心な彼は、完全に向こうの住人になり、ヒロインの持ち物になりたいなんて言っている始末。
 彼の事が好きな都がここにいたとして、さすがに百年の恋も冷めるのではないか、と草介達は思ったくらいだ。

「あ〜分かったから、勉強再開しよう?」

 ひとまず、収まらないだろうと判断した草介は、興奮した忍をシアタールームから追い出し、加奈子をその後ろに歩かせた。

「あれ? 望っち?」
「やっぱり未結の尻、いいな」
「……」

 類は友を呼ぶ。



09.08.30 UP

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