『テスト』

 学生の性分は勉学に励むこと。そして、その力を試す為にはテストを受けなくてはならないということ。時期はもうすぐテスト期間に入っていた。

「分かんない。これも、これも!杉山、当日カンニングさせろ!」
「ふざけるな。追試にならないように、俺が時間を割いてみてやってるんだ。ちゃんと問題を解け」
「杉山の意地悪!」
「すいません。学年違うのに、私まで見てもらっちゃって」
「別に。紺野は物わかりが良いから、教えるのは楽だ」

 場所は、ここらへんでは豪邸と呼ばれる富永家の草介の部屋。中央に設置された大きな丸テーブルに四人勉強道具を広げて、勉強をしているところ。並びは忍に始まり、杉山、加奈子、草介の順番。当初は杉山と忍が入れ替わって、加奈子の隣に忍が来るはずだったのだが、忍が加奈子に対して若干の邪な思いがあるということと、加奈子が忍を苦手としていることがあり、忍を加奈子から離して座らせるということになったのだ。

「ってか、杉山も草介もずるいよ。加奈子ちゃんの隣なんてさ」
「オレは、加奈子ちゃんの彼氏だし。望っちは加奈子ちゃんに勉強教えてるんだから、これでいいじゃん」

 数学のプリントを解きながらぶぅたれる忍に、草介が口を出す。そんなことより、勉強しないとまた赤点取るよ?その言葉にかちんと来た忍は、ばんっとテーブルを叩いて立ち上がる。

「草介だって、普段寝てばっかじゃねぇか!お前こそ、赤点ルートまっしぐらじゃねぇのかよ!」
「そんなことないもん。オレは効率がいいから、ちゃんと解ける」
「じゃあ、テスト勝負しようぜ。お前が勝ったら、何でも一つ言うこと聞いてやるよ。んで、俺が勝ったら加奈子ちゃんとデートさせろ」
「何言ってんの!加奈子ちゃんは関係無いでしょ?」

 こんなくだらないことに巻き込めない。草介が忍の勝負を無視して、また勉強に戻ろうとすると、腕を組んで仁王立ちした忍が、逃げるのか。と鼻で笑った。

「口だけでは何でも言えるしな」

 その一言に、草介はどうやら頭に来たようだ。忍と同じように腕を組んで仁王立ちすると、勝負を受けると言い出した。

「草介先パイ……」
「大丈夫。絶対忍なんかとデートなんかさせないんだから」


 勝負が宣言された数日後。テストも終り、全員の元にテストの結果が配布された。  点数アップに喜ぶ者、下がったことに落胆する者。様々な生徒がいる中、担任の先生が、クラス内での順位を発表した。

「えっと、一位は杉山だな」

 おぉ。と歓声が沸く。一年の頃から、トップの成績をたたき出していた杉山は、先生や生徒達から一目置かれる存在。本人曰く、別に特に自分では勉強してはおらず、教えている間に覚えるんだそうだ。
 で、二位はそれに続く女子生徒。彼女も杉山と同じく、常にトップの成績を出す優等生。そして、三位。先生は、成績表を見ながら珍しいなぁと呟く。こういう成績発表の時は、大体同じ生徒が来るはずだが、今回は違うらしい。先生の呟きに、興味が沸いた生徒達は先生に早く言うように促す。そうだな。と、先生はわざとらしく咳払いをすると、発表の続きを始めた。

「三位は……富永。お前だ」

 次の瞬間、ドッと湧き上がる歓声。呼ばれた本人も、何が起こったのかすぐには理解できなかったが、自分が忍に勝ったという事実を呑み込むと、忍の方に向かってにやりと笑う。

「そんな。先生、そんなの嘘です!草介はカンニングしたんです!」

 余りの衝撃的事実に、納得できない忍が突拍子もないことを口走る。何言ってるのと、草介は忍につめよろうとしたが、それと止めるかのように担任が忍に言った。

「富永がカンニングする訳ないだろう。それより、本宮。お前は五教科ほど課題をもらったから、それを仕上げるんだ。二週間後に追試をするから、復習も忘れずにするんだぞ」

 そうして忍の机に置かれる課題。それと同時にチャイムが鳴り、ホームルームは終了する。放課後に切り替わり、人がいなくなる中、忍は課題に頭をつっこんだ。

「もう嫌だ」

 課題の多さに嘆く忍を追い詰めるかのように、肩に手を置く草介が、その時ばかりは悪魔のように見えた。と、後に忍は語ったのを笑いながら聞いたのはまだ先の話。


09.03.06 UP

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